ディープなロック・マニアなら御存知、LAの敏腕セッション・ギタリスト、マイケル・トンプソンの
MICHAEL THOMPSON BAND 名義による約4年振りの新作”The Love Goes On”。AMAZONで予約してた本作が先日届いたのだが、これが想像を遥かに凌駕する素晴らしい内容で驚愕&ヘビロテの日々が続いてる今日この頃。
音楽性はいわゆるAOR系で、メロハー的な派手さや華やかさと言うよりはジワジワくる系の地味ロックではあるけど、曲作りとアレンジの妙技が光る作品に仕上げてますねえ~さすが!音楽の表現力を熟知しているプロフェッショナルだからこそ作れた名作ではないかな。我が琴線、触れられまくり!
胸を締めつけるメロディの応酬に酔いつつGtソロでニヤリとさせられる哀愁チューン”The Love Goes On”を始め、随所で舞う儚い旋律に心打たれる”War Of The Hearts”、そして、切なポップ調メロディからGtソロにかけての思わず息を飲む展開美で魅せる”My Forever June”辺りは正に白眉の出来ではないだろうか。いやはや、ふとした瞬間の涙腺破壊力が凄まじい。
それと本作では1stアルバム”How Long” (1989年リリース) で歌ってたリチャード・”ムーン”・カルホーンが復帰しており、1stから約35年も経ったという事でさすがに声質は少々変わっているんだが、切ない響きが増しててむしろ本作の色に非常に合ってるなあと。そして聴き込むにつれ、この絶妙に枯れた声の魅力に惚れてしまったので彼の事を調べてみた処、なんと1994年に起こした自転車事故でかなりの重傷を負ってしまい、懸命なリハビリを経て現在に至っていたそうで…。
ttps://www.latimes.com/archives/la-xpm-1995-01-22-me-23152-story.html
こんな壮絶な年月を経たからもあるだろう、今の彼の歌声はほんと聴いてて心揺さぶられる。声域の広さとか歌唱テクニック云々では括り切れない、圧倒的な人間力を感じさせてくれる歌とでも言うかな。それと聴いてると頭じゃなく心に響くから「何について歌っているんだろう?」って、こっちも気持ちが物凄く突き動かされるのよね。”How Long”の頃の、少々ジョン・エレファンテっぽい声も好きだったけど、今はほんと稀有な歌声になってると思う。
そして本作にはボートラ扱いで”Wheelchair”という曲が収録されているんだが、これは”How Long”の2007年Frontiers Recordsリマスター盤に当時の新曲として収録されてた曲でね、リミックスやリレコはしてなく当時と同じ音源の再収録だと思うんだが、改めて聴いてるとやたら胸に迫って来るんだな。”I Miss You…”の歌い回しとか切な過ぎて目が潤んで困るほどなんだが(苦笑)それに1回だけ”June”って歌っている事にも最近気付いたので、もしや本作の”My Forever June”という曲にも関係あるのかな?と思い諸々のCD引っ張り出してクレジット関係を読み直してみた処、”How Long” のFrontiers リマスター盤に “We dedicate this album to ~”の文章が。どうやらカルホーン氏の亡くなった奥様の名前の様で、絶句…。
そうか、このアルバムから伝わって来た説得力はそういう事なのか。亡き人への尽きない愛惜の情や誠実さが音楽を通じて結晶化した様な、儚くも美しい楽曲の数々に思えてならない。込められた感情は言葉で100%は解らなくても、音で聴き手の心に染み入り、その想いを伝えてくれる。落ち着いた曲調だからこそ痛切に伝わる、想いの熱量かもね。
こんな作品、久々に出会えた。これからもずっと聴き続ける、心の拠り所だ。
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